対談風コラム「看板少女と管理人(仮)第十一章」
キャラクター偏愛録【悪魔人間(デビルマン)不動明】
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ファンタジーで言う魔法使いの立ち位置だけど、対生物限定のせいで終始使い勝手の悪い学者さんになってみました。ファンタシースターはダンジョンが鬼畜だけど個人的には好きなシリーズです。オンライン?千年紀オンリーなんで眼中にありません。ヤルダバオト(仮)です。
肉弾戦は対になるメカ担当のカインズに及ばず、生物対応のテクニックに特化してるけど一網打尽できるほど優れた能力でもなく、MP回復手段がないから使いどころが少なく、中盤戦はメカばっかりで役立たず。リメイク版では超アッパー調整されたヒューイ・リーンさんじゃないですか!
リメイク版は戦闘は蛇足だらけで寿命がストレスでマッハ、キャラクターデザインは劣化、とくにネイ・ファースト、セカンドは見るに耐えなかった。本作最大の目玉だった「ネイ復活」を餌にして強引に見せつけられる自慰会話とか、黒歴史ですな。閑話休題。今回は不朽の名作「デビルマン
(永井豪・講談社・全5巻)と主人公「不動明(ふどう・あきら)」を中心に語りたいと思います。
デビルマンは「悪魔の力を身につけた正義のヒーロー」のアニメ版と「残酷描写満載、人間の内面を深く描いた問題作」の漫画版があるよね?どっちを語るの?
アニメ版についてはあまり語る内容はないな。「戦士アモン」が不動明に憑依し、ヒロイン「牧村美樹(まきむら・みき)」への愛に目覚めてデーモン一族を裏切り、デーモンの侵略から人間を守る物語。これで最終回答(ファイナルアンサー)だろ?
アバウトすぎる気もするけどそんなもんだよね。アニメ版は「マジンガーZ」と並んで子供向けのロボット・ヒーローアニメのエポックメイキングになったダイナミックプロの二大看板作品…で説明できちゃうもんね。せいぜい必殺技の羅列なオープニング曲が印象的なくらいかな「デビルチョップはパンチ力♪デビルキックは破壊力♪」。
というわけで、漫画版について語らせてもらうぞ。友人「飛鳥了(あすか・りょう)」の話を要約すると、憑依・融合することで強大な力を持つ種族「デーモン」が氷河期を経て蘇り現代人を絶滅させようとしている。対抗手段はデーモンと融合し「悪魔人間(デビルマン)」になり敵対するデーモンを根絶やしにするしか方法はない、という話。
了くんは現代人の科学力を持ってしても対抗できない。目には目を、デーモンにはデーモンの力で対抗するしかない。と、デーモンと融合した結果自殺に追い込まれたお父さんの死から学んだわけなんだね。
そうだ。デーモンの憑依は肉体はおろか精神にも多大な影響を及ぼす。並の精神力ではデーモンの悪意に打ち勝つことは出来ない。そのために正義を愛し純粋な心を持つ若者「不動明」を選んだわけだ。
そして、了くんは明くん同席のもと悪魔召喚儀式(サバト)を行いデーモンの召喚を決行した…と。
その結果デーモンの英雄「アモン」が明に憑依し、人間の心と悪魔の力をもつ「悪魔人間(デビルマン)」が誕生したわけだ。そして誕生直後に起きたのは人間、憑依したデーモンの区別のない殺戮。サバトに参加したヒッピーのゴロツキたちはデビルマン不動明の手で皆殺しとなった。ただ一人飛鳥了を除いて。
悪魔人間(デビルマン)となって得た勇者アモンの力と知識、そして不動明の純粋で強い人間の心。そういえば作品としての「デビルマン」は当時から革新的な作品として注目されていて、のちのサブカルチャーに大きな影響を与えたんだよね?
その通りだ。私が好きなゲーム「真・女神転生」などが顕著な例だろう。「真・女神転生if...」では不良少年「宮本明」が「悪魔アモン」と融合するという直球極まりないエピソードがあるな。「真・女神転生III
- NOCTURNE」にもルシファーから与えられた悪魔の化身「マガタマ」を取り込むことで人ならざる者「人修羅」となるエピソードなんかもあるしな。
「俺はアキラ…そしてアモン」。合体して「宮本アモン」になっちゃうんだよね(w。アトラススタッフはネーミングセンスも抜群だネ。
ちょっと脱線してしまったな。ともかくデーモンの力と知識を身に着けた不動明はデーモンの脅威として認識され第一の標的ともなったわけだ。そしてその尖兵が「妖鳥シレーヌ」というわけだな。
ちなみに妖鳥シレーヌまでのエピソードは未完ながらDVD
化されていて、未だに完結を望むファンが多いみたいだね。けどそれを放置して別の映像が作られちゃったんだっけ?
実写映画版「デビルマン」とOVA「AMON
デビルマン黙示録」だな。実写版に関しては評判を聞く限り見るまでもない完成度らしいな。「AMON」は視聴したがつまらなかった。原作のテーマや語られるべき部分をまったく理解していない無能なスタッフが作ったという印象だ。残酷描写ばかりが全面に押し出され、デビルマン不動明の意志や心の葛藤、立場や使命感などを全然描写できていない愚作だった。
アニメ版は子供向けに残酷描写は控えめの正義のヒーロー扱い、ストーリーも勧善懲悪。天才「永井豪」の信念は完全に映像化された試しはないんだね。
漫画版に話を戻そう。妖鳥シレーヌとの戦いは了のアシストにより明に軍配が上がるかに見えた。しかしシレーヌに思いを寄せるデーモン「カイム」の身を犠牲にした融合によりさらなる力を得て逆襲をかける!
圧倒的な力で迫る「妖鳥死麗濡(シレーヌ)」!超能力の電撃と角による突進で明は立ち上がれないほどの深手を負ってしまう。このままデーモンに敗れてしまうのか!あやうし不動明ッ!あやうしデビルマンッ!!
だが、立ち往生のままシレーヌは死んでいた。夕焼けの中で勝利を確信した満面の笑顔で…。「みにくい悪魔のはずのその姿はなぜか美しく感じられた」というのが明の感想だな。
カイムの愛やシレーヌの意地、勝利を掴むために結束した姿にアモンの心が動いたのかもしれないね。で、このあとはどうなるんだっけ?
デーモン対人間の戦いがひそかに始まる。人間は遺伝子レベルでデーモンへの恐れをいだき、集団で科学を発展させ、暗闇を切り裂いて進化してきた。対するデーモンも大魔王の統治のもと、狡猾に自分の姿を人間界に紛れさせて人肉食を少しつづ開始してゆく。食物連鎖の頂点たる人間の上にいるのがデーモンというのが永井豪の認識らしいな。そして飛鳥了の不審な動きに注目、といったところか。
ここからはデビルマンならではのキツイ残酷描写が続くね…。魔獣ジンメンのセリフも重いね。
「人間の感覚じゃ生き物を食うのはわるいことじゃない。そーだろう?従順でおとなしいウシ、ブタを平気で食ってるからな。だが殺すのはいけないな。生き物を殺すのはいけないことだ。なーっ、そうだろう?」
食われた人間が甲羅に宿る魔獣ジンメン。恐ろしい悪魔だな。しかも甲羅についた顔には意識も痛覚もそのまま残っているときた。明は悩み苦しんだ結果、ジンメンを取り込まれた人間ごと殺す覚悟を決めたわけだ。人間を食い命を弄ぶ外道ジンメン。だが他の動物をペットにしたり、快楽のために殺す人間という種族がそれを責められるのか…?
人間と生態系、戦争や世界情勢、そして食物連鎖。様々な問題提議をしつつ物語は新たな局面を迎えるんだよね。
人間の弱さを逆手に取った作戦が開始される。「デーモン」と「人間」の無差別合体。目の前で化物になって死んでいく姿を見て冷静な思考を保つのは困難だろう。自爆特攻で「デーモンの存在と恐怖」を同時に強く植えつけることに成功するわけだ。力によって支配されているデーモンを「統率」し「死の命令」を下す。人間の心理を理解した上におそろしく賢い支配者の存在が感じられるな。
ここからは一気に物語が進んでいくね。魔王ゼノンの宣戦布告。デーモンの全世界同時攻撃。そしてアメリカとソビエト連邦(現在のロシア)が冷戦で保有していた核兵器さえも利用して人類を根絶やしにしようと襲いかかる。人類側にはもう希望はないのかな。
いや、そうとは言い切れない。奇跡的にデーモンとの融合に成功した悪魔人間(デビルマン)の存在も確認された。不動明は彼(彼女)らと共にデビルマン軍団を編成してデーモンを迎え撃つ覚悟を決めたようだ。
デビルマン軍団が編成されてデーモンを迎え撃てば人類は勝てるのかな…?人間が抵抗することはデーモンも計算してると思うんだけど…。
デーモンがただ攻撃をしてくるだけならまだよかっただろう。だが、デーモンは最初の攻撃を終えた後すべて撤退した。何故か?人間の自滅を誘う作戦に出たからだ。思惑通り「悪意を持った人間がデーモンになる」という勘違い、そして疑心暗鬼によって世界中で「人間狩り」が開始された。世界大戦と内乱によって世界の大半が焦土と化した。
人間社会の根幹にある疑念を刺激して同士討ちを誘ったわけだね。人間の信じる心は脆い。「スナッチャ-(PCエンジン・1992/10/23)」でもそういうセリフがあったね。
飛鳥了はその後TVメディアに登場し「デーモン憑依の嘘と証拠映像」を使って人類の自滅を大きく推し進めることになる。
「悪魔はいつでも取り憑くことが出来る。親友不動明も悪魔に取り憑かれた!疑え、周りの人間を!悪魔に騙される前に悪魔となった隣人・家族を殺せ!」と。
了くんは明くんにデビルマンになって人間を守って欲しいと願っていたんじゃないの?
正解は違ったわけだな。飛鳥了いや「大魔神サタン」の真の目的は地球を汚した人類を皆殺しにすること。そして不動明個人をデーモンの仲間として迎え入れることだった。
世界中に流された映像によって不動明は人間界を追われた。そしてここからが本作が問題作と言われる展開だね。
その通りだ。人間たちは不動明と親密にしていた牧村一家すべてに悪魔の嫌疑をかけた!恐れた人間たちは被害者から加害者に回ろうとしたのだ!不動明はさらわれた牧村の伯父さん叔母さんが拷問の末に殺される姿を目撃し、守るべき人間の存在に疑問を抱き始める。
そして当の悪魔狩りをした人間たちはデビルマンに見つかって哀れな命乞いをするんだよね。
「お…おれたちのやったやつらはみんな人間だったよ…」「あはは…そうなんだ。しめあげたけどけっきょく人間だったんだ…」「だ、だから悪魔は殺していないさ…」「そ、それにおれたちも好きでやってるんじゃない」「上からの命令なんだ…わかってくれ…」
気違いとなった人間の姿を垣間見た明は慟哭し、守るはずの人間を初めてその手にかけるわけだ。
「おれはからだは悪魔になった……だが人間の心をうしなわなかった!」
「きさまらは人間の体をもちながら悪魔に!悪魔になったんだぞ!」
「これが!これが!おれが身をすててまもろうとした人間の正体か!地獄へ落ちろ人間ども!」
こうして人間に絶望し守る意志も失い、大魔神サタンとの取引を検討し始めるんだよね。「デーモンとデビルマンは共存できる。互いに争わず共に生きよう」と。でも、一つだけ心の依代となるものがあったんだよね。
そう、恋人「牧村美樹」の存在だ。彼女を守る限り自分はデーモンではない悪魔人間(デビルマン)だ、と。たった1人の女性のためだけに戦う決意をするわけだ。
それなのに…こんなのってないよ…
牧村家に帰った不動明の見たものは炎に包まれた牧村邸と、バラバラにされた上に串刺しになった牧村美樹とその仲間たち。そして狂気に染まりきった愚民達だった。ケダモノどもを焼き殺し、炎の中で美樹の首を抱いて佇む彼の言葉は空虚でそして…ただ悲しい。「おれはもう、なにもない。生きる希望も幸福も…生きる意味さえも。まもるべきなにものもない!」
明くんはすべてを失った。残ったのはデーモンに対する殺意と闘争本能だけだった。大魔神サタンの目論見は成功したわけだけど、わずかなひずみがあったんだよね。
そうだ。勇者アモンを犠牲にしてまで不動明をデーモンが築く新世界に生かそうとしたこと。それと…、両性具有であったサタンが不動明を愛してしまったこと。
深く愛し、明くんの性格を誰よりも理解しているがゆえに戦いを避ける事は出来ないことはわかっていた。最後の戦いを。「黙示録(アーマゲドン)」を。
人間は完全に死に絶え、荒野と化した中国大陸に役者は揃った。不動明率いるデビルマン軍団。そして飛鳥了、大魔神サタンのデーモン軍団。最終戦争の火蓋は切って落とされた。これ以降はコメントは必要ないな。それぞれが感じたとおりに読めば良いと思う。
ハッピーエンドでは決してないから、強いて言えばトゥルーエンドって感じかな。
そうだな。そんな感じだろう。本作は「1972年」の古い漫画だが非常に印象深く、以降の私のサブカル作品の価値観に大きく影響を与えた。一読の価値はあると思う。ここまで読んでくれてありがとう。